あの風の中でもう一度
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ウタとの友情夢 のはず畳む
夢の中で、ひとりの女の子がずっと泣いていた。ひとりぼっちは寂しいと言っていた。
「あなた、ひとりぼっちなの?」
思わず声をかけると、女の子はびっくりした顔でこちらを見てきた。赤と白の髪の毛がふしぎな子。おどろくと後ろで結んだ髪の毛がうえにあがるのに、すぐにまた落ちてしまった。
「だだだ、だれよあんた!」
「あなたはだあれ? どうしてわたしの夢の中にいるの?」
「!? ここはわたしの夢よ!」
「そうなの? でも、ここはうちの近くなんだよ」
「え?」
ぱちん、と音がしたと思ったらわたしは目が覚めていた。
起きたのか、と声をかけられて頷くと自分の体がずいぶんと大きく感じた。夢の中の自分が小さな子どもになっていたせいだろう。
数週間後、またあの子に会った。なんと呼べばいいか分からなくて「ストロベリーちゃん」とてきとうに呼んでみたら「ウタだよ! わたしの名前!」と叫ばれた。ウタちゃんと言うと彼女は怒ったような表情でこちらに駆けてきた。
「よーやく会ったな、モンスターめ!」
「モンスターじゃないよ、-名前2-だよ」
「うるさいうるさい! わたしをこんなところに連れ込んでどうするつもり!? 言っとくけど、シャンクスはあんたよりずっとずっと強いんだからね!」
シャンクスって誰だろう、と思いながらも「ここはわたしの夢だよ」ともう一度繰り返す。ウタは怒ったのか、わたしに殴りかかってきたけれどわたしは彼女の動きがどうにもよく見えてしまいふつうに避けてしまった。
前を見ないまま向かってきたウタはびたん! っと木にぶつかった。泣くかな? と思ったけどウタは泣かなかった。でも大声でシャンクスという人の名前を呼んだ。夢の中だからそんな人が現れるわけがなくて。でも、ウタはずっとその人の名前を呼んだ。呼び続けて疲れてへとへとになったころ「やっぱりシャンクスはわたしを捨てたのかな」と言い出した。
「捨てられたの、あなた!」
「うるさい! 大声で言うな!」
「あなたが言ったんだよ!」
「シャンクスは良い奴だもん! そんなこと、しないもん……!」
ウタは泣きそうになっていたが我慢していた。わたしはそんなふうに信頼されているシャンクスという人が羨ましかった。
「ウタ、泣きたかったら泣いていいんだよ。怒ってもいいんだよ」
「……え?」
「いやだーとか、つらいーとかって。口に出した方がいいよ。寂しいとか思ったら言うべきだよ」
ウタはぐむぐむと結んでいた口をひらくと大声で泣き出した。自分を置いていったシャンクスたちのことが恨めしいと言っていた。
ウタが泣き止んだ後、シャンクスはつよい海賊であること。ウタはシャンクスの娘であること。シャンクスに置いていかれて、今はゴードンという男とふたりで島に暮らしていることを聞いた。
話を聞いていると、シャンクスは略奪をする海賊とウタを育ててくれた海賊と同じ人間とは思えなかった。
ゴードンが騙してるんじゃないの? と言うと、ゴードンさんは悪い人じゃないもん!! とウタはまた泣き出した。ウタはとっても泣き虫だった。
ウタはひとりは寂しいという。ゴードンさんも優しいけれど、みんなに会いたいと言う。ウタの手を握りしめるとウタはへにょりと笑って「-名前2-とはいつも夢で会えるもんね」という。次はいつ会えるのか、わたしも分からないけれど「また会おうね」と言って眠りからさめた。
それからずっと夢は見ていなかったけれど、久々にウタに会う夢をみた。ウタはわたしよりもよっぽど大きくなっていて、わたしたちの目線は全く会わなくなっていた。
ウタはシャンクスたち海賊を嫌いになっていて、今は自分の歌でみんなを幸せにすることが目標だと言っていた。
「-名前2-は?」
「なに?」
「-名前2-の夢って何? どうせなら、わたしが叶えてあげてもいいけど!」
「うーん、ウタには頼りたくないなあ」
「どうしてよ!? わたしの力が信じられないの!?」
「信じてるけど。でも、わたしは夢は自分の力で叶えたいなあ」
「……-名前2-はつよいね」
「ウタより弱っちいよ~」
ウタはウタウタの実の能力で、自分の歌を聞いた人をウタワールドへ連れていくことができるのだそうだ。でもここは夢の中なので、ウタワールドは意味がないのだけれど。ウタの優しさはうれしかった。
「-名前2-には、どうやったら会えるのかな。夢の中だけじゃなくて、ちゃんと現実の世界で会ってみたいな」
「さあね、わたしも分かんない」
「……-名前2-って、本当は何歳なの? 絶対同い年じゃないもんね」
わたしもそれはうすうすと感じていた。ウタの成長とわたしの成長はまったく違う。夢だからだよ、と誤魔化すとウタはぶすくれた顔をしていたがそれ以上はなにも言わなかった。
現実世界で会えるように、とウタがわたしに貝殻をくれた。トーンダイアルだと気づいたわたしと、よく分かんないけどこれで音が聞こえるよと笑うウタ。ウタは空島へ行ったことはないらしい。
トーンダイアルにはウタの歌声がはいっていた。心地よいその歌はシャンクスが歌ってくれた子守唄だそうだ。
「なんかね、シャンクスの大切な人がその歌をよく歌ってたんだって」
「へぇー」
たしかにいい歌だ。わたしも口ずさめば、ウタは「音ズレてるよー」と笑いながら一緒に歌ってくれた。自分ではちゃんと歌っているつもりだが、ウタからすると違うらしい。
揺さぶられて起きると、レイリーが心配そうにわたしのことを見ていた。目を覚ました時、いつも彼はそばにいる。まるでわたしのそばにずっと寄り添っているかのようだった。
「平気か、-名前2-」
「うん、大丈夫。掠めただけだから」
船に乗っていようと月のものはやってくる。太ももへ掠めた傷は意外にも大量出血をし、そのまま貧血でぶっ倒れたわたしを男たちはあたふたと看病してくれたらしい。いろんなものが散らばっている甲板を歩いていくと、宝箱を囲んでロジャーたちが騒いでいた。
ロジャーにつよく誘われ、そのままあれよあれよと船に乗り込まされただけのわたしはただ海をよく知っているだけの女である。海と天候と、見れば触れば進むべき道がわかる。航海士という柄でもないので、わたしはただ船に乗っているだけのクルーだった。宝箱にも興味はない。また分け前の話をしているのかと思えば、ロジャーがわたしを見つけた途端大声で叫んだ。
「-名前2-、なあ、おい、見てくれよ! 宝箱の中から赤ん坊が出てきたんだ!」
「はー? なにそれ」
どれどれ、と箱の中身をのぞくと本当に赤ん坊が泣きじゃくっていた。一応申し訳程度にタオルに包まれているものの赤ん坊は「盗まれました」と言わんばかりの姿だった。もしかしたら、怖そうなおっさんたちに見つめられてビビってしまったのかもしれない。
「ほらほら、おっさん共の顔を見たら余計に泣いちゃうだろ」
「んだと!?」
「ロジャー、-名前2-の言う通りにしよう」
「くっそ~~! 島にいるガキにはこの髭は喜ばれるってのに!」
ロジャーたちの騒ぎを無視して赤ん坊を抱き上げる。ウタが送ってくれた歌を口ずさめば、子どもはきゃらきゃらと笑った。真っ赤な髪の毛がきらきら光る子どもだった。
「船長、この子うちで育てない?」
「はあ!? 俺たちゃ海賊だぞ!?」
「うん、だからだよ。この子も将来海賊になるかもしれない」
「どんな理由だよ……」
シャンクス、と名前を呼ぶと赤ん坊は自分のことと分かっているのかまた笑う。もう名前をつけたのか!? と驚くクルーたちにシャンクスの笑顔を見せると反論する気も持てなくなったのか「赤ん坊ってなにが必要なんだ」とまたざわめきはじめる。-名前2-は乳でるのか!? と失礼なことを聞くクルーは蹴っ飛ばし、わたしはシャンクスをロジャーの腕に預けた。
赤ん坊……シャンクスは、楽しそうにロジャーのことを見つめていた。